第1章 年代区分
第1項 放射性同位体による年代測定について
放射性同位体というものがあります。放射能を出す元素のことです。放射能というと原子力発電所のメルトダウンや
原子爆弾の事を想像されることと思います。ちなみに広島型原爆はウラン爆弾、長崎型はプルトニウム爆弾で種類
が違います。また、水素爆弾は核融合エネルギーによって爆発する(一時的に人工太陽を作り出す!)のですが
高温高圧を作りだし、核融合させる為に原子爆弾を内蔵して、その爆圧で核融合を起こさせる仕組みになっています。
閑話休題。この世にある殆どの元素はほおって置くと崩壊してより安定性の高い元素へ変化します。その時放射能を
放出します。これを放射性元素と呼ぶのです。また脱線ですが、原子番号26番を中心にして、その番号よりも大きくても
小さくても安定性が減少します。そして、距離が大きいほど崩壊する可能性も大きくなります。原子番号の大きいほうは
分裂によってより小さい元素になって安定しようとします。このことを核分裂反応といい、これを強制的に起して、その
エネルギーを使って電気を作るのが原子力発電です。同様に小さい元素は融合してより大きな元素になります。これを
核融合反応といい、太陽など殆どの恒星でこれがおこなわれています。ですから、恒星は原子番号26以上の重元素を
核融合反応によって作り出すことができません。そのため26番の原子(言い忘れていましたが鉄(Fe)のことです)が
中心に集まってくるとその重さで収縮し、爆発をおこしてしまいます。(太陽くらいの質量だと爆発しないでしょう)
このときの高温高圧下でFeより重い元素が作られるのです。話がそれすぎましたね。
その元素の崩壊速度は元素ごとに固有の値を取ります。従って、岩石などに残留している放射性同位体の量を調べる
ことによってその岩石の形成された年代を推測するという方法が「放射性同位体による年代測定法」というわけです。
このとき、放射性同位体がもとの量の半分になる期間のことを「半減期」と呼びます。年代測定ではこの半減期をもとに
年代を推測します。ですから元素の量はもとの量の1/2・1/4・1/8…といういように減少していく過程で判断する
ことになります。それでは実際にどんな元素を使用するか表にしてみましょう。

表1−1 年代測定に使用される元素一覧

使用元素 元素の変化 半減期
ウラン−鉛法 238U→207Pb・He 4.5×10
  235U→208Pb・He 7.1×10
トリウム−鉛法 232Th→208Pb・He 1.4×1010
カリウム−アルゴン法 40K→40Ca・40Ar・e  
炭素法 14C→14 5.73×10

という感じになります。これは「大気中に含まれるAr等の元素量が一定である」という仮説に基づいて算出される為
誤差は数%程となります。ですから、測定する時代(つまり現代)から離れれば離れるほど誤差は大きくなっていって
しまうわけです。この放射性同位体による年代測定を「絶対年代」といいます。この他に珊瑚の縞の数や化石の分布
などから生物の生存期間を割り出す「相対年代」と呼ばれる方法があります。一般的にはこの2つの年代測定を
組み合わせて年代の推測を行うことになります。この相対年代の精密度がかなり高く割り出せる時代が
中生代ジュラ紀で、この時代の示準化石であるアンモナイトを使って誤差50万年という精度になっています。

注1) 放射性同位体…同じ元素(原子番号が同じ)でも陽子・中性子の数が違うものが存在ししている。例えば水素は
通常陽子を1個しかもっていないが、極稀に陽子を2個持つ重水素と陽子3個と中性子を持つ3重水素がある。
これらのことを同位体と呼ぶ。同位体は極めて不安定で、安定な元素に放射線を放出して崩壊する。これらの元素を
放射性同位体と呼ぶわけである。
注2) 示準化石…地層のできた地質時代を決めたり、離れた地域の地層の新旧関係を比較するのに利用される化石。
条件として生存期間が短い、地理的分布が広い、個体数が多いという3つの項目がある。
注3) アンモナイト…中生代の示準化石。中生代に地球規模で生存し、進化が速いことからかなりの精度で地質時代の
測定ができる。(上記の通り、誤差は50万年前後)